涸沼は全国屈指のシジミの産地
茨城県のほぼ中央部の海寄りに、関東唯一の汽水湖の涸沼(ひぬま)がある。貴重な水鳥の生息湿地として平成27年5月にラムサール条約登録湿地になったことで知られ、辺りは牧歌的で美しい風景が広がる。涸沼は那珂川の支流の涸沼川が土砂によりせき止められてできたといわれており、川の一部が膨らんだような形状をしている。涸沼の出口からは涸沼川が8キロ程続き、那珂川の河口につながっている。満潮時には海水が涸沼川を通じて涸沼まで逆流してくるが、この海水と淡水の交じり合いが涸沼のシジミを育む。
涸沼で漁獲されるシジミはヤマトシジミで、殻に光が当たるとまるで漆を塗ったかのような艶やかな光沢が現れる。シジミの殻の色といえば多くの人が黒を連想するだろうが、実はシジミは生息する場所によって殻の色が変化する。シジミ漁は涸沼だけでなく涸沼川でも盛んだが、涸沼川の下流の方では赤褐色になり、涸沼では黒くなるといった具合だ。さらに、殻の形状や味も異なっているという。
生息する場所で殻の色が異なる。左は涸沼川の下流域、右は涸沼で漁獲されたもの。地元ではそれぞれ“赤シジミ”、”黒シジミ”と呼ばれるという。