船に灯りが燈る、午前3時。
まだ日も昇らない午前3時の霞ヶ浦を、漁船の灯りがわずかに湖面を照らす。 ワカサギ漁を営む漁師達の朝は早い。 魚も眠る真夜中にトロール網を水に入れ、勘を働かせながら船を走らせる。 深夜、ワカサギはまとまって水面付近に上っているが、日が昇ると深く潜り、方々に散る。 勝負は夜明けまで。 風向きと、経験を頼りに漁船は網を引く。
霞ヶ浦の漁師達にとって、ワカサギは特別な魚だとういう。 かつては帆引き船で操業されていたワカサギ漁。 漁期は毎年7月21日から12月10日まで続くが、漁師達は解禁日から1週間に最も胸を躍らせる。 霞ヶ浦では近年ワカサギの漁獲量が増えており、大漁を喜ばない漁師はいないのだ。 市場の休みを除き、ワカサギを獲る日々が続く。
取材に行った10月は、すでに漁期の半ば。 ワカサギは10cmを超えるサイズになっており、まさに食べ頃。 霞ヶ浦大橋にほど近い手賀漁港から、風もない濃霧の中、船を出してもらった。 日差しのある日中はまだまだ暑いが、夜中の湖上は霧のせいもあって体感温度はかなり低い。 船は真っ暗な湖上を粛々と漁場へ向かう。
網を入れたのは午前3時半。 夜半にワカサギは、水面から程近い場所に群れているという。 日の出までおよそ1時間、漁師の勘を頼りに船を走らせ、網を引き続けるのだ。 漁船の後方でトロール網のブイが弧を描く。