春の風物詩 二艘曳きのサヨリ漁 Webマガジンいばらきの地魚市場vol.3

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茨城の海に麗人が春を告げる。

日の出前、春の風物、二艘曳き。

2013年1月30日早朝、気温0℃と冷え込む日立市の久慈漁港。サヨリ漁を営む稲川勝雄さんと漁船前で待ち合わせた。あたりはまだ暗く、出港準備にいそしむ人影がなんとかわかる程度だ。『稲川さんだ』という確信がないまま声をかけると、「あ〜、おはようございます」という耳慣れた声にほっとさせられる。

稲川さんは久慈浜丸小漁協に所属し、『しらす』や『いしかわしらうお』を狙う船びき網を主体に漁を営んでいる。そんな稲川さんも早春はサヨリを狙う。茨城のサヨリ漁は茨城の海に春を告げる風物詩だ。サヨリ漁は春限定の、網を2艘で曳く漁法。稲川さんは父親であり漁協組合長の徳雄さんとともに操業している。なんでも今日は昼前に組合長の仕事があり、普段より早く帰港するらしい。「いつもは6番かそこら網を曳きますが、今日は4番くらいで戻らないとね」出港準備を終えた稲川さんが言った。

ようやく明るくなり始めた午前6時。勝雄さんの第二稲川丸は徳雄さんの稲川丸に続いて港を出た。2艘曳きのサヨリ漁では、パートナーとなる船と連なって漁場を目指す。あたりを見渡せば6組の船が灯を灯している。素人目にもどの船が組んでいるのか、一目瞭然だ。

サヨリ漁に限った話ではないが、漁場の選択はとても大切だ。向かう漁場は前日までの漁模様を漁師仲間と情報交換することで目星をつけ、漁場では潮の水色や流れをみたり、魚の気配を感じたり、付近の僚船と情報交換しながら網を曳く。今日の漁場は日立沖だが、ずうっと南の鹿島沖にサヨリを追うこともよくあるし、毎年決まって漁場ができる場所もあるという。

長く伸びる赤い下顎と、短い上顎の受け口が特徴的なサヨリ。すらりとした美しい姿の反面、腹腔膜が黒いところから「サヨリのように腹黒い」と使われることも。茨城県では、12月から5月にかけて漁獲され、旬は2月から4月。

これは食べたい!

サヨリを味わう。久慈浜丸小おかみのレシピ

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