狙うメヒカリは水深200mにいる
10月の空がまだ暗い午前3時30分。船長の小泉さんと2人の乗組員、そして取材陣が乗る大昭丸(たいしょうまる)は、“ダダダダダッ”とエンジン音を響かせながら母港の久慈漁港(日立市)を出港した。「魚も人間と同じで、棲み心地のよいところに棲んでいる。」と、漁師歴52年になる大ベテランの小泉船長は言う。長年の経験から狙う魚により水深を変えて網を曳くといい、ズワイガニなら600m、ボタンエビなら350m、ミズダコなら300mといった具合で、今日の狙いのメヒカリは200mあたりにいるという。
未明の久慈漁港。エンジンを暖めて出港に備える大昭丸。
出港から2時間後、沖合の漁場に到着した時にはうっすらと光が差し、辺りの様子が分かるようになっていた。船長の合図で1回目の投網が始まった。網を沈めていくと、網の左右に付いた合計800kgのオッターボード(水の抵抗を利用して網口を広げるための鉄板)の影響で、立っているのも難しいほどの揺れが襲う。網が海底に着くまでに30分。それから更に1時間ほど海底を網で曳いていたが、激しい揺れの中でも漁師さん達は平然とした顔で網揚げに備えて準備を進めていく。
オッターボードを投入した瞬間、大きな白波が立った。すごい迫力だ。