会瀬の定置網 Webマガジンいばらきの地魚市場vol.4

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垣網、箱網、底網。魚を獲る人の知恵。

海原にひろがる定置網

取材日の天候はあいにくの小雨模様。洋上には靄が立ち込んでいる。「網まで40分ぐらいだよ」と教えてもらうが、視界が悪いこともあってか、さっぱり距離感がつかめない(答えは約4kmだ)。網の説明を受けていると、「ほら、あそこ」と指をさされる。振り返ると、旗と規則的に並んだ黄色い浮きが網の位置を教えていた。

定置網について

●定置網
定置網には箱のような網がいくつかあり、魚は矢印で示したように網に入っていく。箱網(はこあみ)にはどちらかといえばブリやタイなどの浮魚が、底網(そこあみ)はヒラメのような底魚が入る。大きさは全長約700m。これに魚を誘導する垣網が直角に張られる。

ハナダイの赤が洋上に咲く

目前に広がる定置網。どれだけ魚が入っているのか、期待に胸が高まる。網起こしは乗組員が長い棒を持って舳先に立つことから始まる。網起こしに使うロープを結んだ、ただ一つの浮きをひっかけるためだ。この浮きを皮切りに、順に網を手繰ることで魚を網の奥に追っていく。網手繰りは船側4か所で乗組員が息を合わせて行う。4か所で同じように手繰らなければ、魚をうまく追い込めない。作業を始めること30分。追い込まれた魚が行き着く箱網のファスナーが開かれ、網がさらに絞られる。水面が丘のように盛り上がり、赤い色と水しぶきが弾けた。「今日は、ハナダイだな」副組合長は笑顔でそう言うと、仲間が行う漁労作業に加わった。

洋上では、繰り返し、繰り返し、何回も何回も、タモ網で魚がすくわれていく。乗組員はここでもお互いの動きを見ながら、クレーンやタモ網、網しぼりと、まるで一人でやっているような滑らかさで事を進めていく。作業に要した時間は約40分。あれほどの魚が網から全てすくわれ、ハナダイの赤がからっぽになった頃、一仕事終えた空気があたりを覆った。

茨城県で唯一の定置網漁は、日立市のほぼ中央に位置する会瀬で行われている。漁は周年操業しており、春はマダイ、通年漁獲されるアジ、サバ、ブリ、マグロ、スズキ、その他さまざまな種類の魚がとれる。

これは食べたい!

会瀬の定置網、旬の味覚。

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