大漁での帰港
出港から3時間と少し。相変わらず、海岸線は霞み、視界は決して良くはない。帰港するなか、今日の漁模様をうかがった(この日に起こしたのは箱網と底網)。「今日は、ハナダイとイナダで3.5トン。ヒラメとマダイは少なくて300キロくらいかな。ブリとヒラメは少なめだけど、ハナダイは今年一番の漁。まあまあだね」と副組合長。そして、「獲れないときは、かご一つ、なんてこともある。海相手だからそういうときもあるけど、それが続くとやんなっちゃうね」と笑った。
会瀬1号が入港すると岸壁に人影がみえる。10名ほどの人が水揚げに向けて待っていたのである。
『おかえりなさ〜い』
初対面、それも、どうみても漁労作業をしてきたとは思えない私にも、温かい声をかけてくれる。日本全国、どこの港もそうなのかもしれないが、声掛けはやはりうれしい。
船からは魚が続々と市場へ流れていく。正確には市場に並べるために種類や大きさに仕分けられてからだ。この作業は大漁であればあるほど当然時間がかかる。副組合長をはじめ仕分け作業に携わる人が言うところの、『うれしい悲鳴』だ。
港で魚の販売が始まったのは帰港してから約2時間後。価格は入札で決まる。買人(かいにん)それぞれが買いたい値段をつけ、それを書いた紙を決められた時間までに入札窓口に出していく。開札を知らせるブザーが鳴ると、誰がいくらで落札したのか、結果が読み上げられていく。明日以降の商売を支える数字。凛とした空気のなか、買人は真剣な眼差しで価格を記録していく。港を出てから魚が売られるまでに、実に多くの人が関わっている。しごく当然のことをあらためて実感させられた取材となった。