タコ壺を船の前で扱うワケ。
『どどっ,ドン! ぼしゃん。どどっ,ドン!ぼしゃん。』
船をゆっくり走らせると、漁獲後、船上に整然と積まれたタコ壺が、自動的に甲板を滑り、船の外に向きを変える板に当たってから海に飛び込んでいく。
整然と並んだタコ壺が自動的に甲板を滑り、再投入されていく。
実はこの光景、鹿島灘では少数派。多くの船では船の後方で水揚げを行い、さらにタコ壺の投入は人力で行う方法が主流なのだそうだ。そう、今回はタコ壺漁を行う船のなかでも、最も工夫を凝らした船に乗せてもらったというわけだ。船長から『後ろで作業している船見たことないの?』と言われてしまったほどだ。
船が前進することで生じる水の抵抗を利用した、オリジナルの漁具投入システムを考案したのは山本船長で、『毎日のことだから、少しでも楽したいでしょ。』と笑っていたが、『やまもと丸はいろいろ工夫するよねぇ。』と所属漁協の職員が言うのと同じく、取材者も感心しきりである。
ついでに、船の前方でタコ壺漁を行う方法の利点が発揮されるのは12月のシラス漁の時だと言う。12月は年によってはまだシラスが獲れる時期。シラス漁の網は船の後ろに積むので、船の後ろでタコ壺漁をやるなら、いちいち網を下ろさなければならない。船の前方でタコ壺漁をやれば船の後ろに網を積んだままでよい。なるほど、出漁してもタコの獲れ具合が良くなければ、沖でそのままシラス漁に切り替えられるということか。非常に合理的なやり方である。
この日は、6時の出港から10時30分くらいまでに12ヶ所に仕掛けたタコ壺の回収と再投入を繰り返し、1~4kgほどの鹿島たこを全部で約130kg漁獲することができた。
陸揚げされた鹿島タコは、計量後直ちに入札され、港から運びだされていく。
注)記事中の写真は平成28年12月に撮影したものです。