茨城のイカの最高峰「ヤリイカ」 Webマガジンいばらきの地魚市場vol.7

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沖で網を曳く、船からの距離400m

『魚獲り、イカ獲り。これが俺のすべてだ。』

漁場に着くまでの間、操舵室で小泉船長に問いかける。ヤリイカのこと、経験されてきた漁業のこと、漁業の未来のこと。船長は気も使ってか、話を続けてくれる。

暗闇にまばゆいディスプレイには、過去の航跡が幾重にも映っている。ノートを手に取り「これが俺のすべてだ。」と言う。覗かせてもらったノートには毎回の曳網記録などが記されていた。

イカの漁場は、水温と経験、そして僚船の情報で決めるという。過去の経験はノートと航跡が記録されたGPSプロッタに詰まっている。この日、自動操舵機能も使って向かった漁場は、久慈浜よりも南。大洗方面だ。自動操舵機能がホイール付きのマウスで設定される。かなりのハイテクに、驚きを隠せなかった。

「スタンバーイ」。5時22分、船長から船室で待機していた乗組員にマイクで声がかかる。7分後、投網が始まり、およそ30分経ってから網を曳き始めた。漁場の水深は約130メートル。底びき網は、通常、水深の3倍の長さのワイヤー等で曳かれるから船から網までの距離は約400mもあることになり、網の揚げ降ろしだけでも時間がかかる。しかも、それだけ船から離れたところにある漁具でも、船長はギリギリの調整を行っているという。「底は擦るけどゴミは入れない。ゴミをきらって網を浮かせばイカは網から逃げる。」まさに長年の経験がなせる技。これも本当に驚きだ。

※ヒトデなど水揚げしない底生生物や海底の石などのこと。

右上の画面内の色とりどりな線が日々積み重なった航跡だ。

大昭丸の小泉船長。ヤリイカやメヒカリなど、久慈浜の水揚げを支える底びき網漁師のひとりだ。

漁場は茨城沖に広がる。本県のヤリイカは主に底びき網漁によって1~5月に獲られ、2~4月に旬を迎える。漁期後半には食べごたえのある大きさのものが漁獲される。

これは食べたい! ヤリイカは初春のグルメ

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